台詞なのだと、仕組まれたものなのだと気づくのに、時間はそうかからなかった。
これまでのあたしは未熟で幼稚で、子供の考えしか持ち合わせていなかった。この世に存在する物が総て事実で真実なのだと、疑問をもつことなく思い込んでいた。
人ごみに紛れて息づいているほんのひとにぎりの悪意も、それを覆い隠す善意と愛に比べればたいしたことない。幾人も殺した殺人鬼にも悪質な事を繰り返す人にも、毎晩夜中に大音量で音楽を聴く隣人にも、少なからず暖かい、所謂人間らしい部分があるのだ。そう信じて疑わなかった。
あたしには大好きな友達がたくさんいた。多少の我侭を享受してくれ、辛いときにも話しかけて微笑みかけてくれる。そっと肩を抱いて優しい言葉をくれる。あたしは友達を、どんなことを言われても嫌いになることは決してなかった。
世の中の誰にもあたしのことなんて気にかけないんだと思っていたあたしも、友達に気にかけてもらい、優しさとほんの少しの愛を、見返りを求めることなく与えてもらえるんだと思うと安心した。
ある日友達の一人があたしに言った。
―――ずっと一緒だよ。
嬉しかった。それはどこにでもあるありふれた言葉だった。それまでの人生の中で同じようなことは何度も言われた。けれどその言葉は、ひどく落ち込んでいて、ぎすぎすしていたその時のあたしの中には信じられないほどスムーズに浸透した。
穏やかな休み時間。あたしは友人達の楽しそうに雑談する姿を眺めていた。本当に楽しそうで。無邪気な顔で高らかに笑い声をあげていた。微笑ましかった。友人達のまわりだけに暖かな光が降り注いでいるように彼女達の姿は輝いて見える。大好きな友達。
あたしは彼女達の話の輪に加わることができない。彼女達のつくりだす仲良しの雰囲気は外部のものを寄せ付けない、閉鎖的で敵意を剥き出しにした、見えない刃を備えていた。
彼女の言葉は台詞だった。
結局、誰の眼もあたしの姿をとらえはしないのだった。
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